投資ガイド

不動産所得の損益通算 — 給与所得を圧縮する正しい設計

不動産で出た赤字を給与と通算して節税。「節税のための赤字」を狙う前に押さえるべきこと。

執筆: Luxjpn 編集部 · 1 分で読了 · ·

不動産投資の節税効果として最もよく語られるのが 損益通算。物件運営で出た赤字を、給与所得と相殺して所得税・住民税を軽減できる仕組みです。仕組みは強力ですが、税務署が見落とさないポイントもあれば、過大な期待で物件を選ぶと本末転倒になるケースもあります。本記事では、損益通算の制度・限界・適切な活用方針を整理します。

損益通算の基本構造

所得税法上、所得は10種類に分類されます。給与所得・事業所得・不動産所得・譲渡所得など。このうち 不動産所得 で赤字が出た場合、それを給与所得と相殺して、最終的な課税所得を圧縮することができます。

例: 給与所得800万円、不動産所得 −150万円

  • 通算後の課税所得: 800 − 150 = 650万円
  • 所得税(税率33%帯): 約66万円減
  • 住民税: 15万円減
  • 合計の節税額: 年81万円

「赤字」になる構造 — 減価償却の力

キャッシュフロー上は黒字なのに、税務上は赤字 — この差を作るのが減価償却費です。減価償却は、建物の取得費を耐用年数で按分する経費で、実際の支出を伴いません。

例: 木造築22年(法定耐用年数22年、簡便法で4年)、建物部分1,000万円

  • 毎年の減価償却費: 1,000万 ÷ 4年 = 250万円
  • 家賃収入100万円、運営経費40万円とすると
  • キャッシュフロー: 100 − 40 = 60万円(プラス)
  • 税務所得: 100 − 40 − 250 = −190万円

キャッシュは月5万円ずつ入ってくるのに、税務上は190万円の赤字。これを給与所得と通算すれば、年5〜80万円の節税が可能になる、という構造です。

節税効果が高くなる組み合わせ

損益通算の節税効果は 所得税率に比例 します。給与所得が高いほど節税額が大きくなる仕組み:

  • 課税所得330万円〜695万円: 所得税率20%、住民税10% → 通算30%節税
  • 695万〜900万: 23% → 33%節税
  • 900万〜1,800万: 33% → 43%節税
  • 1,800万〜4,000万: 40% → 50%節税
  • 4,000万超: 45% → 55%節税

つまり、給与1,500万円の人が不動産で200万円の赤字を出すと、年約86万円の税還付。給与600万円の人が同じ赤字を出しても、年60万円の還付です。所得税率33%超のゾーン(課税所得900万円超)から、損益通算の節税効果が劇的に効いてきます。

「節税のための赤字物件」が危険な理由

業者が「節税できますよ」と勧める築古物件は、減価償却を大きく取るために建物価格が割高に設定されているケースが多い。物件総額3,000万円、土地500万・建物2,500万 という配分で、確かに減価償却は取れますが、物件としての本質的な価値は土地500万円相当しかない、というケースが珍しくありません。

節税効果が4年で尽きた後(減価償却終了後)、税務上の赤字が消え、家賃収入そのままが課税所得になる。同時に物件は築26年・27年と進み、家賃下落・修繕費発生で実質収益が悪化。出口で売却すると、減価償却済み建物の譲渡益も計上され、譲渡所得税も発生。トータルで「節税分は取り戻されただけ」という結果になることが多いのが現実です。

損益通算が制限される場合

不動産所得の赤字は無制限に通算できるわけではありません。以下に該当するものは通算不可:

  • 土地取得時の借入金利息 — 不動産所得の赤字のうち、土地分の借入金利息に対応する部分は通算不可。建物分の利息は通算可
  • レジャー目的の別荘・別宅 — 居住目的でない不動産の赤字は通算不可
  • 規模が「事業的」でない場合 — 5棟10室基準を満たさないと、白色申告者は赤字の繰越控除ができない

このうち 土地利息制限 は意外と認知度が低く、見落とされやすい論点。物件価格3,000万円のうち土地が1,000万円なら、借入1,800万円のうち土地分相当の借入の利息は通算対象外です。税理士に相談すると、この計算を正確に分けて申告書を作れるかが見極めどころになります。

賢い損益通算の設計

損益通算を活用する正しい姿勢は、「節税ありきで物件を選ぶ」のではなく、「収益性のある物件を買い、結果として税務上は赤字になる」というケースです。

具体例: 築16年RC物件、家賃利回りNOIベース 4.5%、キャッシュフローは月3万円黒字、減価償却で税務上は年100万円の赤字。これなら、「実物として運営が回り、家賃も維持できる」+「税務メリットも享受できる」のバランスが取れた状態です。

確定申告の実務

不動産所得の損益通算を行うには、確定申告が必須。以下の書類を準備します:

  • 収支内訳書(白色申告) または 青色申告決算書
  • 家賃収入の明細(賃貸借契約書・通帳コピー等)
  • 運営経費の領収書(管理費・修繕費・税金・保険料・委託料等)
  • 借入金の利息明細(銀行発行)
  • 減価償却計算書
  • 確定申告書B + 第三表(分離課税がある場合)

初年度は税理士に依頼するのが安全。年20〜30万円の費用がかかりますが、適切な経費計上(自宅の一部を事業按分・電話代・交通費等)を漏れなく拾うことで、結果的に節税額が増えるケースが多い。マネカフェ お金の相談のようなFP相談を入り口に、税理士紹介を受ける流れも検討の価値があります。

損益通算は、給与所得が高い投資家ほど効果が大きい仕組み。ただし、節税のために収益性の悪い物件を買うのは本末転倒で、出口で取り戻されるという冷静な認識を持って、トータルでの最適化を図ることが鉄則です。

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