投資ガイド
出口IRRを計算する — 5年・10年保有での売却前提シミュレーション
保有期間中のキャッシュフローと売却益を1つの利回りに統合する、IRRの実践的な使い方。
不動産投資の最終損益を語る時、表面利回りやFCRだけでは不十分です。なぜなら、それらは「単年度の収益力」を表すだけで、5年・10年保有した後の売却を含む総合リターンを示さないから。総合リターンの代表指標が IRR(Internal Rate of Return、内部収益率)。本記事では、保有期間中のCFと売却損益を統合してIRRを計算するアプローチを、具体例で見ていきます。
IRR とは何か
IRRは「投資のキャッシュフロー全体を、時間価値も込みで何%の利回りで評価できるか」を表す指標。式は複雑ですが、Excelの =IRR() 関数で簡単に計算できます。考え方はシンプル:
初期投資 → 毎年のCF → 最終的な売却金額
これら一連のキャッシュフローが、複利でどの利回りに相当するか。10年保有でIRR 8%なら、複利8%で運用したのと同等のリターンを出した、ということ。
具体例: ワンルーム 10年保有のIRR
都心のワンルーム、物件価格2,000万円、自己資金200万円(借入1,800万円・金利2.0%・35年)、年間NOI 80万円、想定家賃下落年1%、10年後に1,800万円で売却する想定:
キャッシュフロー(年次):
- 0年目: -200万円(自己資金投入)
- 1年目: +5万円(NOI 80万 − 元利返済71.5万 − 諸税3.5万)
- 2年目: +4万円(家賃微減)
- 3年目: +3万円
- …
- 10年目: 売却益 + 累積CF
10年後の物件価値1,800万円、その時の借入残高約1,400万円(35年の元金が400万返済された状態)、譲渡所得税(長期譲渡20%)を計算:
- 売却額: 1,800万円
- 残債返済: -1,400万円
- 取得費・減価償却累計考慮譲渡益: 約200万円(細かい計算は別途)
- 譲渡税: -40万円
- 手取り: 1,800 − 1,400 − 40 = 360万円
10年間のCF累計+売却手取りで、IRR を計算するとおよそ 11〜13%。表面利回り6%・FCR 2.5% という単年度の薄利益も、10年通算+出口込みで見ると2桁台のIRRに化ける、というのが不動産投資の長期持続戦略の妙味です。
5年保有 vs 10年保有 vs 15年保有
同じ物件でも、保有期間でIRRは大きく変わります。一般的なRC築浅マンションの傾向:
- 5年保有: IRR 6〜10%(短期は売却諸費用の比重が大きく、利回りは抑制)
- 10年保有: IRR 10〜14%(借入の元金返済が進み、売却時の手取りが厚くなる)
- 15年保有: IRR 12〜16%(築年数による物件価格下落と元金返済進捗のバランスが効く)
- 20年超保有: IRR 14〜18%(完済間際〜完済後はインカム比率上昇)
築古になるほど物件価値の下落速度が落ちる(底値圏)反面、家賃も下落するため、最適保有期間は物件・エリアごとに異なります。一般則としては、RC築浅は10〜15年、木造築古は7〜10年が出口検討の目安です。
IRR を高める3つの設計要素
1. 適切なレバレッジ — 自己資金200万円→100万円に減らせると、初期投入額が減ってIRRが向上。ただしDSCR 1.3割れリスクあり
2. 家賃維持・上昇エリアを選ぶ — 都心3区・準都心の優良エリアは家賃下落幅が小さい。10年で家賃-5%と-15%では、累積CFが大きく違う
3. 売却タイミングの最適化 — 築15年で売る vs 築20年で売るで、価格差が500万円以上出ることも珍しくない。市況・税制・残債のバランスで判断
クラウドファンディングのIRRとの比較
不動産クラウドファンディングは、運用期間が短く(6〜24ヶ月が多い)、出口価格を運営者が想定して組成しているため、想定IRRが事前に公表されている案件がほとんどです。ゴールドクラウドのような不動産クラファンは、想定利回り5〜8%のレンジで案件を組成しており、これが実質的にIRRに近い指標になります。
個人で物件を買って10年保有する戦略のIRRが10〜14%、クラファンのIRRが5〜8% という差は、自己投資の労力(物件選定・管理・出口判断)と機関投資家パッケージとの利回り差として理解できます。両者を組み合わせるなら、コア部分(70%)を実物投資、サテライト(30%)をクラファンというアロケーションが、リスク分散とIRR最適化のバランスがとれた配分です。
IRR を計算するためのツール
市販の不動産投資シミュレーターには、IRR を出せるものと出せないものがあります。REA流 不動産収支シミュレーションシートのように、IRR・NPV・修繕費控除済みCF まで網羅したシートを使うと、購入前の意思決定が圧倒的に正確になります。Excelで自前で組むのも勉強になりますが、長期保有時の家賃下落・修繕費発生・税務影響まで網羅すると意外と複雑なため、既製シートを使う方が時間効率が良いケースが多いです。
表面利回りで物件を選ぶ段階を超えたら、IRR で投資判断する習慣を身につけることで、保有期全体での損益が予測でき、後悔のない購入決定ができるようになります。
本記事で言及したサービス
本記事のテーマに関連する、編集部が掲載しているサービスです。リンクは広告を含みます。
J.P.Returns マンション投資(J.P.Returns株式会社)— 個別面談で学ぶ都心マンション投資戦略
サービス詳細を見る →
プロパティエージェント 不動産投資面談(プロパティエージェント株式会社)— 都心ワンルーム特化の不動産投資、面談で投資戦略を相談
サービス詳細を見る →
【REA流】不動産収支シミュレーションシート(富樫 潔)— プロが使う収支シミュをExcelシートで
サービス詳細を見る →
Oh!Ya マンション投資 一括資料請求(株式会社セレス)— 副収入におススメのマンション投資資料を一括取得
サービス詳細を見る →
ファイナンシャルアカデミー 不動産投資スクール(株式会社FinancialAcademy)— 体系的に学ぶ不動産投資。全国教室+オンライン
サービス詳細を見る →
ゴールドクラウド (不動産クラファン)(ゴールドトラスト株式会社)— 不動産投資型クラウドファンディング・ゴールドトラスト運営
サービス詳細を見る →