投資ガイド
1棟アパート 2,000〜5,000万円の世界 — 区分から1棟への階段昇り
区分マンション卒業組が次に向かう1棟アパート。利回り・運営・融資の3観点で整理。
区分マンションを2〜3戸保有して運営に慣れた投資家が、次のステップとして検討するのが 1棟アパート。価格帯は2,000万円台(地方木造アパート4世帯)から5,000万円台(都心近郊軽量鉄骨6〜8世帯)まで幅広い。1棟は区分とは運営の質が全く違うため、メリットと運営コストを正確に把握してから選ぶことが重要です。
区分と1棟、構造的な違い
同じ家賃収入を生み出す物件でも、区分と1棟では収益構造が違います。
区分マンション(1戸)
- 家賃: 月8万円・年96万円
- 修繕積立金・管理費: 月18,000円・年21.6万円
- 固定資産税: 年8万円
- NOI 利回り: 物件価格1,500万円 で 4.4%
1棟アパート(地方木造6世帯)
- 家賃: 各月5万円 × 6戸 = 月30万円・年360万円
- 修繕積立金・管理費: 修繕費は自己責任(年30〜60万円積立必要)
- 固定資産税: 年30万円
- 建物保険: 年5万円
- NOI 利回り: 物件価格3,500万円 で 7.5〜8.5%
1棟の方がNOI利回りは1.5〜2倍。ただし「修繕積立金がない=自分で全額負担」「客付けは6戸分自分で動く」という運営負担が桁違いに増える構造です。
1棟ならではの運営課題
大規模修繕の責任
区分は管理組合が大規模修繕を行うが、1棟はオーナー単独で計画・実施。木造アパートなら屋根塗装(10年・80万円)、外壁塗装(10年・100万円)、シロアリ対策(5年・15万円)、共用部水回り(15年・30万円)。築20年経つと累計300〜500万円の修繕費が必要になります。
同時退去リスク
大学生向け6世帯のアパートで、卒業時期に3〜4世帯が同時退去 → 半年間2世帯のみ稼働、月収益が1/3に。区分1戸の空室なら影響は限定的だが、1棟の同時退去はキャッシュフローに深刻なダメージ。立地・入居者属性の分散を意識した物件選定が必要。
地域工務店との関係
地方の1棟アパートは、修繕業者・客付け業者・税理士など、現地の人的ネットワークが運営の質を決めます。遠隔オーナーは、信頼できる管理会社1社と長期契約を結び、現地の状況を月次で報告してもらう仕組みが必須。
融資の通りやすさ
1棟物件は、融資審査の基準が区分とは異なります:
- 属性: 年収700万円以上が標準的、自営業の場合は決算書3期分
- 自己資金: 物件価格の20〜30%が必要(区分より厳しい)
- 金融機関: 地銀・信金が主力。メガバンは1棟は通りにくい
- 金利: 1.8〜2.8%(区分より少し高め)
初心者がいきなり1棟を狙うのは難しい。区分2〜3戸で実績を作り、銀行との関係を深めてから1棟に挑戦するのが王道のステップアップ。
4世帯 vs 6世帯 vs 8世帯
1棟アパートは規模で運営の質感が変わります:
4世帯: 物件価格1,500〜2,500万円。区分2〜3戸と同等の管理負荷。家賃収入のスケールメリットは限定的
6世帯: 物件価格2,500〜4,000万円。スケールメリットが効き始める。空室1戸の影響度が薄まる
8世帯以上: 物件価格3,500〜6,000万円。事業的規模(青色申告65万円控除)を1棟で達成可能。家賃収入規模が大きく、本格的な事業として運営
新築 vs 中古の経済学
新築アパート(価格8,000万〜1.5億): 表面利回り6〜8%。減価償却が大きく取れる。家賃下落リスクが新築から始まる(築10年で-15%が標準)
中古築15年(価格3,500〜6,000万): 表面利回り8〜10%。新築プレミアム消化済み、家賃カーブが緩やか。修繕費はそろそろ発生開始
中古築22年超(価格1,500〜3,500万): 表面利回り12〜18%。減価償却4年戦略の対象。融資が通りにくいが、現金買いまたは不動産担保ローンで取得
エリア戦略
1棟アパートは「エリア選定が9割」と言われるほど立地が重要。チェック項目:
- 人口推移: 過去10年で増加 or 維持していること
- 主要駅徒歩15分以内 or 大学・病院・工場至近
- 類似物件の空室率10%以下
- 新築アパート供給がほどほど(過当競争でない)
- 賃貸需要のピークが季節集中していない(大学エリア以外)
条件に合う物件は、東京近郊・大阪・名古屋・福岡・札幌・仙台・広島・京都の主要エリア中心駅徒歩圏が候補。これらの周辺で築15〜25年の中古アパートを探すのが、初回1棟物件の現実的な選択肢になります。
担保戦略との連動
区分2〜3戸を保有してから1棟を取得する流れでは、既存物件の担保余力を共同担保として活用できます。トラストHD 不動産担保ローンのような専門ローンも選択肢に含めて、銀行融資と組み合わせて自己資金を抑えながら1棟取得を実現する戦略が、現実的なステップアップです。
区分を続ける vs 1棟に行く
「区分を5戸まで増やす」 vs 「1棟に切り替える」は永遠の問い。簡易的な比較:
- 区分5戸: 累計家賃収入 月40万、運営難易度低、出口の柔軟性高
- 1棟8世帯: 累計家賃収入 月40万、運営難易度高、出口は売却前提
運営に時間が割ける投資家(自営業・退職後)、現地に詳しい人は1棟が有利。本業忙しいサラリーマンは区分5戸で運営負荷を抑える方が合理的です。
1棟アパートは、不動産投資の本格運営の第一歩。区分の延長として捉えるのではなく、「不動産業を始める」という腹のくくり方で取り組むことが、収益と長期持続の両立に必要です。
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